親知らずは抜くべき?
皆さんはこれまでに親知らずを抜きましたか?抜いたことがある人は痛い思いをしましたか?
自分は大学を卒業して臨床研修修了後、母校である九大病院の第二口腔外科(正式名称は口腔顎顔面外科学分野)に合計7年間所属していました。その7年間、大学病院や出向先の関連病院でたくさん親知らずを抜く経験をさせていただきました。親知らずといっても簡単に抜けるものや手間のかかるもの、抜いたほうがいいものや抜かなくてもいいものと様々です。今回の記事では抜いたほうがいい親知らずやなぜ抜いたほうがいいのかを紹介していこうと思います。
抜いたほうがいい親知らずかどうかを区別するために、自分はその親知らずがきちんと磨ける環境にあるかという点と、機能しているかどうかという点を診るようにしています。
親知らずは埋まっている場合が多いのですが、完全に骨の中に埋まっている歯は基本的に抜く必要はありません。骨によって隔てられているためそこに菌が侵入することがないからです。中途半端に埋まってる歯は一部が外に露出しているため、そこから菌が侵入し、歯磨きでそれを取り除くのは困難となっています。内部に菌が溜まると周囲に炎症を起こし、痛くなる場合もありますし、自覚症状がなくてもいつの間にかじわじわと周りの骨が溶かされていきます(理屈は歯周病と同じです)。また、虫歯になる場合もあります。こういう場合に患者さんにとって一番痛いのは、手前の歯に大きなダメージを与えているケースです。親知らずへのダメージだけならば、その親知らずを抜けば終わるのですが、手前の歯に与えられたダメージ(骨が溶ける、虫歯になる)はそのまま残り、致命的(神経を取る、抜歯適応など)となることもあります。なので、親知らずを抜くということは手前の歯を守るという意味合いが大きいです。一見埋まってるように見える親知らずでも、歯茎に埋まってるだけで骨から飛び出ている親知らずには菌が侵入します。先天的に親知らずが欠損している人も割と多く、その辺りの判断はレントゲンを撮らないと分からないので、気になる人は一度歯医者でみてもらいましょう。
機能しているか親知らずとは、まずまっすぐはえていることが条件で、噛み合う反対側の親知らずもまっすぐ生えてきちんと噛み合っている必要があります(=食べ物を噛んですりつぶすことができる、歯として機能している)。一見まっすぐはえているようでも、少し斜めを向いていたり、埋まり気味だと歯ブラシできれいに磨くのが困難となるので、そういったケースでは抜く選択もありとなります。斜めに向いてはえていると噛んだ際に頬の粘膜に突き刺さって痛くなるので、そういったケースも抜歯適応です。
注:矯正治療がかかわる場合はこの限りではありません。矯正する先生の判断で、完全に埋まっていても抜く場合があります。
最後に、抜いたほうがいい親知らずはなるべく早い時期に抜いたほうがいいです。上で述べた周囲へのダメージも最小限に抑えられますし、年を取るにつれて歯と骨が癒着してくるので、抜く際にそこを剥がすのに手間がかかります。若いうちに抜いていた方が楽に抜けますし、術者もそのほうが楽です(笑)。二十歳前後であれば親知らずの根が未発達な状態の場合が多いので、個人的にはこの位の時期が最もおすすめです(根が発達して先端部分が曲がると難度が大きくあがります)。
下の埋まってる親知らずは、抜いた後に腫れや痛みが出やすいので、抜くのをためらわれる人が多いですが、反対に上の親知らずは痛みもそこまで出ない場合が多いので、初めて抜くのであれば上から抜くのをお勧めします。決心がつくのであれば(そこが一番難しい笑)、なるべく歯医者で相談して早めに抜きましょう。