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絶対に放置NGな治療

R5.6.27

 通院途中の患者様が途中から来なくなるのは珍しいことではありません。来れなくなるのにはいろいろ事情があると思いますが、治療途中で長く間が空いてしまうと、状況が悪化してしまうことがほとんどです。その中でも特に途中で放置するのが良くない治療がありますので、今回はそれについて説明していきます。

 

途中放置が特に良くない治療は…

 ずばり根管治療です。通称、根っこの治療と呼ばれており、虫歯菌によって侵された神経をとったり(抜髄治療)、一度神経を取った歯の根っこに侵入した細菌を清掃する治療(感染根管処置)を指します。この治療を行う際、治癒が難しく長期化するケースがあるためその間に来なくなってしまうこと場合があります。

 

何故放置すると良くないのか

 根の治療を行っている最中は、穴の開いている部分に仮蓋(仮封材)をしていますが、あくまで仮の蓋です。次回の治療の際にある程度容易に外すことを前提としていますので、そこまで頑丈に塞いでいるわけではありません。当院で使用している仮封材はキャビトンというセメントで水に反応して硬化して穴を封鎖します。詰めた直後は口腔内細菌の侵入を防ぎますが、時間の経過とともに徐々に封鎖性が失われていくので細菌が侵入するようになってきます(メーカーは有効期間は推奨2週間としています)。また、このセメントは部分的に欠けてきたり擦り減ったりしやすいので、歯ぎしりをするひとや噛む力が強い人だと徐々に仮封材が減ってきます。数ヶ月も放置すると仮封材はほとんど失われている場合が多く、残っていたとしても封鎖性は失われれており、細菌が歯の内部に侵入し放題な状態になってしまいます。 

キャビトン
キャビトン

​歯の内部に細菌が侵入するとどうなる?

 問題点は2つあります。

①歯の内部から虫歯が広がる​ 

歯の内部は主に象牙質という組織で構成されています。健常な歯において、歯の上部の表面はエナメル質という組織で構成されており、人体において最も丈夫な組織ですので、容易に菌の侵入を許しません。しかし、象牙質はエナメル質と比べると脆弱なので、歯の内部に侵入した細菌によって容易に虫歯が進行してしまう場合があります。歯の根や根に近い部分は歯質が薄くなっているところが多いので、虫歯に進行してしまうと外側に穴が開いてしまう可能性があります。僅かな穴であれば塞ぎようもありますが、ある程度大きく開いてしまうと塞ぐのも難しいですし、塞いだところで隙間から容易に細菌が侵入します。そのような状態になってしまうと、周囲に細菌とともに炎症が広がってしまい、治療によるコントロールも困難ですので抜歯せざるを得なくなるケースが大半です。

②根の先の病変(根尖病変)が悪化する

根の先まで細菌が侵入すると根の先(根尖)の周囲が化膿して炎症を起こします。これを根尖病変と呼び、前述の感染根管処置で治療するのですが、仮蓋が外れたままの状態だとどんどん根の中に細菌が入ってくるので下手をすると治療を始める前よりも状態が悪くなる場合があります。状態が悪いと治りも悪くなりますので、その場合は抜歯や外科療法を検討することになります。抜髄の場合は根の奥まで菌が侵入しておらず、根尖病変を伴わないケースが多いので感染根管処置よりも断然治りは良いのですが、蓋がない状態が続くと根の中が感染を起こして根尖病変になってしまいます。

根管治療の途中で放置はNG

 経験上、放置することで歯の状態がどれくらい悪化するかは個人差があります。これはその人の持っている虫歯リスクや普段の清掃状況によるものだと思います。放置する前は全然治すことができた歯が放置したことによって抜歯せざるをえない状態まで追い込まれることも珍しくはありません

​どうしても来れない場合の対処法

 仕事の都合などでどうしても長期にわたって来れなくなる場合はどうするべきでしょうか?当院の場合、事前にその旨を伝えていただければ通常の仮蓋よりも頑丈な素材(強めのセメントやレジン樹脂)で蓋をするようにしています。その状態であれば、歯磨きさえしっかりしていてくれればそうそう細菌が侵入することはありませんので、長期間にわたって中断することができます。

(毎回頑丈に蓋をすればよいのでは?と思う方もいらっしゃるかと思いますが、保険治療において根管治療は格安で行っています。そんな中で毎回そのようなことを行うのはコスト的にも時間的にも全く見合わないため、到底できません。)

 ほかの歯科医院さんでも相談すれば対処してくれると思いますので、歯を失わないためにも黙って中断するのは絶対にやめましょう。

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